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         =曽根氏のレポートです=

            ヒマラヤ氷河から見える地球の温暖化

                                            レポーター・曽根芳樹氏  2007.12.27

                       

   

      「地球温暖化防止は人類の大きな課題です」

           今最も問題に成って居ります氷河の融解、「今ヒマラヤの氷河が危ない」中でも
           最も融解の進んでいるイムジャ氷河、ローツェを仰ぎ見るチュクンの部落から
           1時間程の距離にあり左手にはアイランド・ピークが見えます。

           往路途中のディンボチェの部落での老婆の話によると一昨年の6、7月に氷河が
        決壊して土石流が襲い、ディンボチェ部落では高い場所にテントを張り避難をし
        たとの事でした「長い間住んでいるがこんな事は初めてだ」との事。

            また住民は何故氷河が決壊したか原因も解らない、ただその日の生活でいっぱい
         の住民、被災した原因など知る余地もない

           イムジャ氷河のエンド・モレーンに立つと氷河最深部にある6,000mアップ
        の氷壁は融解が進み大部分が崩落して岩肌が露出しており、また氷河地形の中に
        あるべき氷柱もすべて氷河湖に没して僅か一部分しか視認できない。



                    イムジャ氷河奥の岩肌は10m〜15m程の氷壁が融解して落下した状況。
                  



                上記氷河の奥部分のサイドモレーンと乾季の氷河湖底(満水時には10m〜15mの水深になる)                   
                 


            現在の氷河湖の面積は目視で1,000万uと判断出来る、1,950年代には
        小さな水溜りにしか過ぎない氷河地形が今では1億トンを貯える大きな氷河湖、
        黒部ダムの1
/2に匹敵するエネルギーを持つ巨大なダム湖に変わってしまった、
        構造耐力を持たない盛土体、この先は言わずして解る。

           土木技術者としてみる目、現在は乾季、モンスーンの時期には足が竦むような情景
        が目に浮かぶ。

        同行の友人、アンバブ氏に安全か景観かの選択を問う、彼は当然安全である。
        彼もこの地域(ソル・クーンブ)の出身、人事では無いとの事、早く人工的でも

        良いから安定して排水できる設備が必要である、しかしこの国にはそんな財力は無い、
        仮に有ったとしても現地まで機械が移動出来る道は無く、空輸といっても小型ヘリ
        しか無い地域・・・・・この先氷河はどの様に成って行くのか。

        こんな氷河湖がネパールには20箇所も有り、ブータンには24箇所も有る様だ、
        しかし既にメラ・ピークへの途中にあるサバイ氷河の様に決壊して10数名の死者
        を出した事故が遭っても記事に成らない地域、ここに住む人々は地球温暖化の文化
        この恩恵を全く受けていない人々、被害だけを被る、こんな理不尽な話が在って良い
        ものだろうか、二酸化炭素を際限も無く放出している先進国、早急に対応をしなけ
        ればならない。

        こんな氷河湖の決壊による被害は極地であるこの地域の一部分でしか無い、
        ヒマラヤ氷河は洪水調整の大きな役割を持っています、わが国の様に森林が70%
        を占める国は森林が降雨を吸収し保水して、洪水調整をしているが、ヒマラヤでは
        降水は雪であり、調整は氷河であることで現在までバランスが保たれていた筈であ
        るが温暖化により降水は雨に変わり、岩稜帯の山々は一気に流下するエネルギーの
        みを生むだけであり、洪水調整の出来ない地形は下流に大きな水害をもたらし、
        毎年起きるバングラディッシュの水害もそれらが起因するところが大きいと思われる。

            この様に温暖化がそのまま続けば5年から10年後には多くの氷河湖が決壊して数
        万人が被災する大洪水が発生する恐れがあります、また氷河は1
/5に成ってしまい
        下流部の農業、漁業などの社会的影響も大きい。

        それでは地球温暖化に因ってどの様な影響があるのか考えたい、先ず気象への影響は
        大気中の水蒸気の増加による平均降雨量の増加、これらの変動幅の増大による豪雨、
        旱魃の増加と熱帯雨林の乾燥化や崩壊等です。

            また気温の上昇による沿海氷河、氷床の融解に伴う海面上昇でこれらの影響は汽水
        域を必要とするノリ、カキ、アサリなどの沿岸漁業へのダメージ、また地下水の
        上昇に伴う地下構造物の破壊と対策費用の増大や塩分混入に因る工業、農業、生活
        水への影響です、また台風、集中豪雨による人的、物的、経済的被害の増加です。

        これらの気象への影響と同様に深刻な社会的影響が発生します。
        低緯度地域の感染症(マラリア等)の拡大、鳥インフルエンザ等新しい病気の発生
        雪解け水に依存する水資源の枯渇、農業、漁業を通じた食料事情の悪化による難民
        の発生と大規模な移住、永久凍土の融解建造物の破壊であります。

        しかし我が国では食料自給率が40%未満であるため輸入植物の不作に伴う価格変動、
        また供給不能に陥る。

        以上簡単に考えられる事でもこれだけの事柄が想定されます、我が国のCO2排出量
        は年間12億トンで全地球の4.7%に相当し、世界第4位の排出国です、国土面積
        の割合からですとダントツの排出国です。

        家庭からの排出量は一戸当り15Kg/日で年間の総排出量は2億トンに成ります、
        全体の12億トンから比較すれば1
/6ですが、やはりこの底辺から考えなければな
        りません。

        最近世論では2,050年で平均気温の上昇を2度で食い止めれば等と言って居りま
        すがやはり極地での生活者、環境を考えますと待った無しの状況です、

         先ず温暖化防止への意識改革が必要です。「我が孫子の事へ」と考え、素晴らしい
         地球を後世に残して行くことが現代地球人の使命では無いかと思っております。
                   

                           日 本 山 岳 会 
                                      麗 山 会  曽 根 芳 樹

  

慶応大学福井教授グループが設置した観測機器
(現地からナムチェまでは無線、ナムチェから日本へはGPS携帯端末へ)
崩れ行くモレーン丘(この上にもローツェ氷河があります)
流出土で埋まってしまった下流部のイムジャ氷河
(2年前に流失して氷河湖が埋まってしまい形はなし)
下流部の流失した吊り橋
(吊り橋は高い位置に架ける筈だがその高さで土石流が襲ったと思われる)
流失した吊り橋の基礎部
(直径20m程の岩塊に基礎を施した筈だがワイヤーが切れずに巨大な基礎岩が倒壊した)
完全に決壊した氷河湖(イムジャ湖の南20Kmにあるサバイ氷河の災害状況)
流失したサバイ氷河の全景
(部落は土石流に飲み込まれ数名の死者が出る、また畑も牧場も・・・・)



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